熱性けいれんについて
お子さんが突然けいれんしたらびっくりしますよね。
事前に知っていれば、そんな時でも少しでも落ち着いて対応できる一助になればと思い書きます。
熱性けいれんとは?
熱性けいれんは、生後6ヶ月〜5・6歳頃までの乳児期に起こる、通常は38℃以上の発熱に伴って起こる発作です。髄膜炎や代謝異常や脱水、その他明らかな発作の原因が認められないものを言います。
熱性けいれんの痙攣はいつ起こる?
熱が高くなった後24時間以内に痙攣が起こる事が多く、特に急激な体温の上昇とともに起きることが多いです。
2歳までに6割、3歳までに8割くらいの熱性けいれんが始まります。3歳までに始まることが圧倒的に多いです。
熱性けいれんは繰り返す?
熱性けいれんを起こした子供の60〜70%は一生に一度しか発作を発症しません。
逆をいうと30〜40%に再発を認め、そのうちのさらに半数近くが3回目以降の発生を認めます。1歳以下から始まった子供はくり返しやすいとされています。
熱性けいれんの症状は?
熱の出始め(急激な熱の上昇時)に起こることが多く、けいれんによって発熱に気づくこともあります。
熱性けいれんの症状には様々な形があり、手足をピクピクさせたり、急に手足をかたくして突っ張ったりなどがあります。意識だけがなくなることもあります。
痙攣が治った後はぼーっとしたり、そのまま寝てしまうこともあります。
痙攣中は呼吸が不十分なので唇の色や顔色が悪くなることもあります。
持続時間は1〜2分程度です。長くても数分以内には消失します。
それ以上にけいれんが続くのは単純な熱性けいれんではないので特に注意が必要です。
子供の熱性けいれんの対応はどうしたらいい?
まずは落ち着きましょう。
目の前でけいれんしたお子さんを見たらきっとパニックになるご両親が多いと思います。痙攣が起こってしまったら適切に対処することが大切なので、まずは落ち着きましょう。
落ち着いたら、お子さんの体を横向きにします。
けいれんの時は嘔吐をすることがあり、上を向いたままお子さんがけいれんした状態で嘔吐をすると、吐物が口の中や空気の通り道にはいってしまい、呼吸を妨げたり窒息する恐れがあります。
痙攣の持続時間と様子を記録
お子さんを横向きにしたら、どれくらいけいれんが続いているのか時間を確認してください。またどのような痙攣だったのか覚えておいてください。
熱性けいれんで救急車を呼ぶかどうか
痙攣が5分以内に止まって、その後意識状態が普段と変わらないようであれば落ち着いて医療機関を受診してください。
5分以上続く場合はすぐに救急車を呼びましょう。
痙攣が治まっても意識や顔色が戻らない、痙攣を繰り返してしまう場合もすぐに医療機関を受診しましょう。
熱性けいれんの後遺症は?
重篤でない単純な熱性けいれん(正式には単純型熱性けいれんと言います)は予後良好な病気です。脳障害や知能低下などの後遺症は起こらないとされています。
熱性けいれんは繰り返すの?
半数以上の子供は熱性痙攣を繰り返しません。
逆をいうと熱性けいれんを起こした子供の30〜40%に再発を認め、そのうちのさらに半数近くが3回目以降の発生を認めます。1歳以下から始まった子供は熱性けいれんをくり返しやすいとされています。
熱性けいれんは予防できるの?
けいれんを予防するためのジアゼパム(ダイアップ)座薬があります。
単純型の熱性けいれんであれば予防的な薬は使用しませんが、以下に当てはまるお子さんはけいれんをとめる座薬の使用が推奨されています。
・過去に15分以上続くけいれんを起こしたことがある
または、下記から2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上反復した場合。
- 焦点発作または24時間以内に反復する
- 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達遅滞
- 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
- 12ヶ月未満
- 発熱後1時間未満での発作
- 38度未満での発作
単純型熱性けいれんとは
熱性けいれんの中で下記の特徴がある場合には、単純型熱性けいれんといいます。
- 発作時間が15分未満(意識の回復がよい)で通常意識を失う
- 24時間以内に2回以上起きない
- 左右対称の全身性のけいれん
「単純型」の場合には、典型的な熱性けいれんと判断することができ、より詳しい検査を必要とすることが少なく、熱性痙攣の60%〜70%は一生に一度しか起こらず、単純型の熱性けいれんでは脳障害や知能低下は起こさないのでダイアップ(ジアゼパム)の予防投与も必要ありません。
よくある質問
Q:熱性けいれんは何歳までですか?
A:5〜6歳頃までです。そのころまでに発熱とともにまたは24時間以内に起きる痙攣を熱性けいれんといいます。
Q:熱性けいれんを起こしやすい子は?
A:熱性けいれんには遺伝も関係しており、熱性けいれんの子供の半分では親族に熱性けいれんをおこしたことがあるとされています。
Q:熱性けいれんとひきつけの違いは?
A:痙攣のことをひきつけといいます。痙攣の中に熱性けいれんは分類され、生後6ヶ月〜5・6歳頃までの乳児期に起こる、通常は38℃以上の発熱に伴って起こる髄膜炎や代謝異常、その他明らかな発作の原因が認められない痙攣発作のことを熱性けいれんといいます。
Q:熱はないのですが、大泣きした後にぐったりとしたのですが、熱性けいれんですか?
A:これは熱性けいれんではなく、泣き入りひきつけといいます。泣き入りひきつけは、乳幼児が大泣きした後、呼気(息をはいた)状態のまま、呼吸停止し、顔色不良、意識喪失し、全身の脱力(ぐったりする)やけいれんなどを起こす病態です。通常すぐに呼吸が再開し、後遺症は残しません。熱がないときにおき、てんかんなどと違って発作の前に必ず「大泣き」や「びっくりする」などの誘因があります。
Q:熱性けいれんになるとてんかんを発症するの?
A:熱性けいれんの90%以上がてんかんを発症しないとされています。
ただし、熱性けいれん前の神経学的異常、両親や同じ親から生まれた兄弟姉妹におけるてんかんの家族歴、単純型でない熱性けいれん(正式には複雑型熱性けいれんといいます)、短時間の発熱-発作間隔等があるとてんかんの発症危険度がすこし上がります。