子どもの熱や風邪症状はほとんどの場合ウイルスによる感染症なので抗生剤を飲んでも意味がありません。しかしこの溶連菌に感染すると治療に抗生剤が必要であり、他の感染症では多くが対症療法でありまた違った対応をしなければならないので、注意をしましょう。
溶連菌とは?世田谷区駒沢の小児科が解説
溶連菌とは細菌の一種で、正式名称はA群β溶血性連鎖球菌といいます。(以下:溶連菌)この細菌が以下のようないろいろな症状を引き起こします。
溶連菌感染の症状は?
①急性咽頭炎
発熱、喉の痛み、頭痛を訴えて発症することが多いです。
喉は真っ赤に腫れ上がり、扁桃腺に白い膿がついていることが多いです。舌が赤くブツブツとなって苺のように見えます(見た目の通りこれを苺状舌といいます)。首のリンパ節の腫れや湿疹が出ることもあります。
②猩紅熱
溶連菌が出す毒素によって、咽頭炎に引き続きお腹のあたりから全身に広がる痒みを伴 う発疹が出ます。だいたい1週間くらいで皮がむけ始め、3週間ほどで全身の皮がむけ終わり元通りになります。色素沈着は残しません。
③伝染性膿痂疹
いわゆるとびひです。皮膚に溶連菌が感染すると、小さな水疱ができ、膿を持つようになって自然に潰れることが多いです。皮膚がめくれてただれた状態になることがあります。
溶連菌はうつる?潜伏期間は?
溶連菌はうつります。咳やくしゃみによって感染する飛沫感染です。
潜伏期間は1〜5日です。感染力が非常に強いと言われており、子どもから大人に感染することもあります。
健康な人でも『保菌』といって喉に菌が住み着いている場合があります。
この場合は喉の痛みも熱もなく、周囲へ感染させることもなく、治療の必要もありません。
溶連菌の検査は?
溶連菌の検査は、迅速診断キットによるもの、培養検査、血液検査などがあります。
一番手軽ですぐに結果が出るのが迅速診断キットによるものです。
綿棒で喉の奥を少しこすって専用の検査キットで感染しているか確認します。
検査結果がでるまでにだいたい5〜10分くらいかかります。
培養検査と血液検査はすぐに結果が出ないため、迅速診断で診断がつかない場合などに考慮することがあります。
世田谷区駒沢のNES駒沢クリニック小児科では迅速診断キットですぐに診断が出来ますので、周囲で溶連菌の方がいる、溶連菌と思われる症状があればご相談ください。
保菌者の場合にも陽性と出ることがありますが、その場合は症状と照らし合わせて判断します。
溶連菌感染後に尿検査は必要?
溶連菌の感染後に、溶連菌が腎臓に影響して溶連菌感染後急性糸球体腎炎という病気を起こすことがあります。
溶連菌に感染した後1〜3週後に血尿、蛋白尿、尿量の減少、むくみが出現します。
これを早期に発見しようと尿検査を行っていることがありますが、「絶対に必要」ではありません。
なぜなら、溶連菌感染後糸球体腎炎は症状が明らかなものが多いからです。
上記の症状が出れば明らかにわかるので、病院を受診して溶連菌感染を起こしていた旨を医師にお伝えください。
溶連菌の合併症は?
合併症としては先に書いた急性糸球体腎炎、リウマチ熱、PANDAS(溶連菌感染症関連小児自己免疫性神経精神疾患)があります。
- 急性糸球体腎炎:感染後に尿検査は必要?の項目を参照して下さい。
- リウマチ熱:溶連菌に感染した2〜3週後に関節の痛み、心臓や神経に関する症状、皮膚に赤い輪っかのような湿疹を認めます。
- PANDAS:溶連菌による神経精神障害の事を言います。
強迫性障害やチックの症状を呈します。強迫性障害とは頭の中に浮かぶイメージにとらわれて自分でもバカバカしいとおもう行為を止められない状態です。
チックとは音声や運動が急に出現し繰り返し自分の思いに反して出現する状態です。
人食いバクテリアって溶連菌のことなの?
子供には少ないのですが、溶連菌の中に劇症型があり(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)、溶連菌が皮膚や筋肉組織に入り込み急激に症状が進行し、手足が腐ったり、腎不全、ショック状態になります。死亡することもある重い病気です。
溶連菌の治療は?抗生剤は?
溶連菌の治療には抗生剤の内服が必要です。抗生剤は決められた回数を処方された分しっかり飲みきることで、しっかり治療できるだけでなく耐性菌の発生を抑えることができます。
抗生剤にはいろいろ種類がありますが、溶連菌の時に飲む抗生剤の種類はペニシリン系の抗生剤です。ペニシリン系抗生剤にはサワシリン、ワイドシリン、パセトシンがあります。
ペニシリン系の抗生剤にアレルギーがあるときにはマクロライド系の抗生剤を飲みます。
マクロライド系にはエリスロシン、クラリス、クラリシッドなどがあります。
合併症を予防するために処方された抗生剤はしっかりと飲みきりましょう。ペニシリン系であれば10日間は内服が必要です。内服開始後速やかに症状は改善するため、薬を勝手にやめてしまう人がいますが、溶連菌は薬をやめた途端にすぐにまた増え始めます。
処方された分はしっかり飲みきりましょう。
溶連菌感染はいつから登園できる?出席停止になる?
溶連菌感染症は学校保健法で、
『適正な抗菌剤治療開始後24時間を経て全身状態が良ければ登校可能』
とされています。
保育園や幼稚園でも独自に基準を決めていることがあり、園に確認をしましょう。
登園許可証・登園確認書は必要か?
学校保健法では指定はないのですが、保育園や幼稚園によっては診察後に医師がサインをする登園許可証か、保護者様が記入するだけでいい登園確認書が必要になる場合があります。ご希望があればNES駒沢クリニック小児科で書類作成いたしますのでお気軽にお申し付けください。
熱がある、喉が痛い時は、無理をせずに受診をして相談しましょう。