こども(子供・小児・赤ちゃん・乳児)の便秘は病気です

便秘は小児ではありふれた疾患の一つです。
しかし、便秘に対する捉え方にばらつきがあり、また定義が曖昧であったり、医療者と患者様のご家族との考え方の違いがあるため、治療のゴールが曖昧になって、治療が途中で終わったり、なんとなくつづけていたり、治療を受けていないお子様がいるのではないかと思います。
「うちの子は大丈夫」と思っているご両親、今一度、お子さんの食事や排便について見直してみてください。
- 頻繁におなかやお尻を痛がる
- 排便に時間がかかる、便に血が付く
- いつもおしり(肛門のまわり)が荒れている
- 足をクロスしたりして、排便を我慢している様子がある
- 食欲がない、よく吐く、口が臭い
- おねしょがなかなか治らない
これらの症状が認められるときは、もしかすると便秘かもしれません。
便秘が重度になってくると、食欲がなくなったり、吐いたり、お腹が膨れてきたり、下痢の様な水様の便が出たりすることもあります。しかし、お子様がある程度大きくなると便の回数や状態をチェックしなくなることが多く、なかなか便秘と気づくのが難しいのです。
また、昨今の感染症流行の影響でお子様が外で体を動かす機会が減ったり、食や生活様式の欧米化により、以前に比べて便秘になりやすい環境になっています。
一般的な「便秘症」と
難治性の「慢性便秘症」
約7割のお子様は、いわゆる一般的な「便秘症」で、通常の治療で良くなります。
しかし、小児の場合には、年齢による便秘の捉え方や生活環境の違い、また、お子さんごとの重症度も違いますので、一人一人の全体像を把握し、継続的に経過観察を行ったり治療計画を立てることが大切です。
また、約3割のお子様は、難治性の「慢性便秘症」であることが知られており、より積極的な治療を長期間継続する必要があります。また治療を中断してしまい病状を放置してしまった場合、トイレトレーニングが進まなくなったり(排尿自体にも影響がでます)、食欲低下による成長・発達の遅れに繋がる可能性や、無意識に便が漏れてしまう遺糞症を発症してしまう方もいます。
そして、難治性便秘の中には極めて稀ですが、手術などの外科的治療が必要な「原因のある便秘症」が隠れていることがあるので、排便習慣の変化をしっかりと記録し、親御さんと共に経過を見ていくことがとても大事であると考えています。
うちの子便秘かも?と思った親御様はお気軽にご相談ください。
便秘ってどんな病気?
便秘は子供によくみられる症状の一つで、10人に1人かそれ以上と言われています。小学生の4人に1人は便秘という報告もあります(日本トイレ研究所 2020)。
便秘は『便が滞った、または便が出にくい状態』と日本小児外科学会で定義されています。便秘の定義は様々あり、一概に何日便が出ていないかということでは判断が難しい病気です。
1歳以上の小児の場合は下記の場合に便秘を疑います。
- 排便が週に3回未満
- 続けて5日以上、便が出ない
- 毎日排便があっても、排便時に痛がる
- 肛門から血が出て、便の外側に血がつく
- コロコロとした便が頻回に出る
1歳未満のお子様の場合は、排便機能が成熟していないため、1週間に1回の排便でも問題なく成長するお子様もいらっしゃいますが、1週間に3回未満しか排便がない、便が固くて出にくそう、食欲がない、お腹が張っている、気持ち悪そうにしている、吐いてしまうなどの症状がある際は便秘症の可能性考えられます。
便から見る健康サイン
お子様の便秘を発見するサインは、便の形にもヒントがあります。
便の形でみる
タイプ | 形状 | 特徴 | 健康サイン |
---|---|---|---|
コロコロ便 | ![]() |
硬くてコロコロしたウンチ。ウサギのふんのようなウンチ。 | 便秘疑い |
硬い便 | ![]() |
コロコロの便がつながった状態のウンチ。連なったソーセージのような形のウンチ。 | 便秘疑い |
やや硬い便 | ![]() |
表面にひび割れのあるバナナのような形のウンチ。 | 便秘傾向 |
普通便 (バナナ様) |
![]() |
表面が滑らかで軟らかいバナナのようなウンチ。とぐろを巻くこともある。 | 正常 |
やや軟らかい便 | ![]() |
はっきりとしたしわのある軟らかいウンチ。半分固形がまざったようなウンチ。 | 下痢傾向 |
泥状便 | ![]() |
境い目がほぐれて、ふにゃふにゃしたウンチ。決まった形はなく、泥のようなウンチ。 | 下痢傾向 |
水様便 | 全くの水状態 | 水のような状態で、固形物を含まないウンチ。 | 下痢or便秘傾向 |
※便の形だけで便秘と診断はできませんが参考にできますので、
便秘で受診される際はどの便の状態なのか医師に伝えるようにしましょう
便の色でみる
【年齢:1歳未満】
色 | 特徴 | 健康サイン |
---|---|---|
黄色〜黄土色 | 普通の便の状態です。消化酵素である緑色胆汁が母乳やミルクと反応して腸管を通って、変色して黄色〜黄土色になります。 | 正常 |
緑色 | 普通の便の状態です。緑色の胆汁が、腸管を早く通過した際に緑色の便となります。腸の動きが活発の際に起こる場合があります。 | 正常 |
赤色 | 大量の血が混ざっている時は消化管出血などを疑います。浣腸をした際に赤い血液と粘液が混じったジャムのような状態で出て、急な噴水状の嘔吐や火がついたように急に泣くことを1〜30分おきに繰り返す場合は腸重積も考えられますので病院に連絡を。 | 便秘ではないが異常 |
黒色 | コーヒー残渣のようなものが混じった黒い便は上部消化管(胃や十二指腸)で出血を起こしている可能性があります。 | 便秘ではないが異常 |
白色 | 嘔吐とともに白い下痢が出る場合はロタウイルスの感染症が考えられます。皮膚や白目が黄色い場合は胆道が閉鎖している可能性があります。 | 便秘ではないが異常 |
【年齢:1歳以上】
色 | 特徴 | 健康サイン |
---|---|---|
茶色 | 普通の状態 | 正常 |
表面が赤色 | 茶色い便の周りに赤い血が付着している | 便秘傾向 |
便秘の原因
便秘の原因は、食生活や睡眠などの生活習慣だけでなく、便意を我慢したり、過度なトイレトレーニングや体の他の場所に特別な病気が原因の場合もあります。まずは便やお腹の状態を把握してから治療をすることが大切です。
食生活

食物繊維は腸で吸収されず、水分を含んで、便の量を増やす効果があります。 トマトやレタスやお菓子などは食物繊維が少なく、おからやさつまいもやかぼちゃなどは食物繊維の含有量が多いので、過度の摂りすぎはよくないですが、意識して摂るようにしましょう。
便意を我慢する

便意をしばらく我慢すると、一時的に便をしたくなくなります。水分を吸収する役割の大腸に便が停滞し、さらに水分を吸収して硬い便になってしまいます。硬いと肛門が切れたりして痛みを伴うため、さらに我慢をしてしまい便秘が進んでしまいます。
また、溜まった便が腸を押し広げ、便意を感じにくくするため、さらなる悪循環におちいります。
1〜2歳になると便意を意識的に我慢できるようになります。2〜5歳になるとうんちは出さないといけないことがわかるため、便秘の悪循環は2〜5歳で起こりやすいです。
また、トイレトレーニングのタイミングで、うまくできないことを叱られると、しかられるのが嫌で便意を我慢してしまうことがあります。5〜10分の短時間で排便できた際に思いっきり褒めてあげることでうまくトイレトレーニングが進んで便意を我慢することが減ります。
便秘の検査方法
検査方法には、問診・触診や聴診、レントゲン検査、エコー検査(超音波検査)などがあります。当院ではレントゲンやエコーは実施しておらず、入念な問診や触診などで検査をしていきます。
便秘解消法
便秘の解消法は、まずは溜まった便を除去してから生活習慣、食事、お薬で治療していきます。
便塊除去
まずは溜まっている便を出すことが大切です。グリセリン浣腸や浣腸、すぐに便を出す必要がない場合はお薬で便を出していきます。あまりにも便が硬い場合は指で便を砕く(摘便)ことをすることもあります。
生活習慣の改善
規則正しく早寝早起き、決まった時間にバランスの取れた食事を3食、軽い運動で腸を動かし、なるべく腸の中に便を溜めないようにゆとりのとれる時間帯に短時間トイレに座るようにしましょう。
お薬での便秘の治療
浸透性下剤や刺激性下剤、坐薬のお薬があります。お子様の状態に合わせてお薬を処方します。
お薬は原因を取り除くものではないので、便が出たからといってすぐに自己判断でやめると再発することがあります。便秘症の治療は一朝一夕で済んでしまうことは少なく、ほとんどのお子様は比較的長期間、治療の継続が必要です。 お子様の状況を見ながら治療内容、治療を続ける必要があるかなど、相談しながら決めていきましょう。
世田谷区のこども(子供・小児・赤ちゃん・乳児)の便秘の症例報告
便秘でお悩みの子供の治療について、NES駒沢クリニック小児科での治療例を提示します。
便秘で悩みのお子さんが便秘を少しでも解消できたら嬉しい限りです。
NES駒沢クリニック小児科では小児科専門医が子供の便秘の治療をしています。
子供の便秘の治療 症例1
1歳9ヶ月女児
生後2ヶ月から便秘、他院に通院し服薬もしていたが改善せず、5日間便が出ないことも。排便には毎回時間が掛かり、つらそう。便は固くお尻が切れて出血することも時々あった。4月からプレ保育に預けるため、なんとか解決したい。という思いからNES駒沢クリニック小児科に来院された。当院で詳細に排便習慣を聴取し治療を開始、薬剤調整を行い1週間で柔らかい便へ変化、2週間後には週に3回普通便が出せるようになり、排便時の痛みもなくなった。
子供の便秘の治療 症例2
1歳6ヶ月女児
他院で便秘治療をされていた女児。便は出るようになったが、下痢になってしまい薬剤調整希望がありNES駒沢クリニック小児科を受診。ご本人の排便回数や便の性状を見ながら投薬調整を行い、1日2回普通便が出るように調整を行った。
世田谷の上馬にあるNES駒沢クリニック小児科では子供の便秘の治療を行っています。感染発熱外来とは別の時間帯で診察をするので安心して受診ができます。